世界遺産 海域管理計画に関する所感

(2005/08/12 19:41)
関係者の皆様 国際生態学会から成田空港に戻りました。松田です。
○○さん、まとめありがとうございます。
座長の進行案に従い、早く議論を進めるべきだと存じます。いくつか意見を述べます。
1. 基本方針 これは既に合意したことと理解しています。賛成。
2.調査研究について 「順応的に対処する」というだけでは、順応的管理にはなりません。管理計画を順応的に運用する必要があります。 そのためには、将来の管理目標(たとえば資源量水準を現状以下に下げないなど)が必要であり、それが実現できているかを検証するモニタリング体制と、状態が悪化した場合、(好転した場合)の対処方法をあらかじめ記しておくことが重要です。(順応的管理でなければ、状態が悪化した時点で管理の失敗です。順応的管理は、最悪の事態(=失敗)を避けるために、悪化の兆候が現れた時点でさまざまな管理措置を講じることになります。これは失敗ではありません。予想される兆候とその対策を書き下すことが大切です。)
 わが国のTAC法でのABC規則はおおむねそのようになっています。ABC算定のための基本規則 をご覧ください。上記ルールと同じ規則を設ける必要はありません。しかし、減っていないかどうかわからない、減ったときに何もしないというのでは、自主管理とはいえません。これは、○○さんの図表にはないかもしれませんが、漁業者の頭の中にはある程度あることだと思います。それを明文化することが、基本方針との整合性を図る上で必要です。
3.対象魚種を列挙する すべての魚種について具体的な管理目標と監視、順応的な漁獲ルールを作ることは不可能でしょう。スケトウダラを含む主要魚種について、いつまでにどんな管理計画を作るか、見通しを立てるべきだと思います。
4.トド、アザラシ類の対処方法 管理計画にこれを明記することは必要だと思います。IUCN評価書に答えるには(必ずしも私自身が必要と感じているわけではないが)、海獣類の餌資源が十分であることの調査検討が必要でしょう。食性調査も必要かもしれません。 これについては、トド(水産庁)、アザラシ(環境省)の北海道での管理計画全般との整合性を考え、知床で必要なことがあれば、それを加えると言う作業が必要だと思います。
 今年度の旅費はほぼ使い尽くしました(管理の失敗)。しかし、何とか工面して最低一度は知床にうかがいたいと思います。
(2005/08/15 01:14)
皆さん
(SSCのサケ科魚類専門家グループと相談する件について) 私の意見を申します。先日の○○さんの分析にあったように、IUCN評価書では、単に河川工作物がサケマス類に与える影響を評価するだけでなく、放流事業についても評価及び数年後の検証を求めていると理解しています。だとすれば、放流事業については、漁業者が会議の場に加わっている海域WGにおいて議論するのが妥当だと思います。
 これは何も、IUCNの言うとおりにしないといけないということではありません。知床の自然にはぐくまれた持続可能な漁業を維持する妥当な管理計画とその検証手段を我々が提出すると言うことでよいと思います。
 その際に、IUCNのサケ専門家グループと途中経過でも議論をすべきだと思いますが、それは日常的に議論するという性質のものではなく、議論の途中で必要に応じて彼らに説明し、科学的知見にも度ついた意見を求めると言う作業を繰り返すものだと思います。その頻度については、座長判断でよいのではないでしょうか?少なすぎても後々合意が難しいし、かといって多すぎても我々の主体性に関わると思います。
(2005/08/21 12:11) 松田 裕之
 打ちあがり、投棄の回収はすぐにでも検討すべきですね。これは「公共事業もあり」だと思います。すぐにでも実施してよいかもしれない課題でしょう。
 海底構造物による湧昇促進は、自然遺産地域でやるかどうかちょっと躊躇います。自然をいじって生産力を高めるのは一見なじみません。ただ、現在の磯やけ問題が「自然現象」でないとすれば、その保全措置を考えるべきかもしれません。基本はその原因を取り除くことだと思いますが、現実的な解決策を考えるべきでしょう。