自然再生事業の協議会とは

Date: Mon, 16 Jul 2007 09:02:37 +0900
 下記のお返事ありがとうございました。

  1. 環境省自然再生基本方針では協議会に専門家を入れろと書いていますが、協議会とは別に専門家委員会をつくるのが望ましい姿です(専門家自体は「利害」関係者ではない)。そのような専門家会議を作る【場合、】生態学者が二人入るとよいのですが、一人も入らない場合もあります。(日本生態学会生態系管理専門委員会 自然再生事業指針)
  2. 生態学者に意見を求めても、必ずしも反応がピンとこないという点について】学会というのは専門性を共有しているのであって、価値観を共有している集団ではありません。また、生態学とはかなり広い分野ですし、里山保全方法、維持機構を皆が学ぶわけではありません。私も、自分がかかわったことのあるものしかわかりません。
  3. 【協議会の分科会で多数決で決められたという点について】自主的な連合体であるはずの協議会がConsensus(全会一致)でなく多数決で決まるというのはかなり珍しい例だと思います。これはまずいですね。いずれにしても、専門家会議が開かれるなら、その意見を待ってから意思決定すべきでしたね。今から蒸し返せるか。(一度決めたことを蒸し返すのは、好ましくない。互いにそうしだしたら、先に進まなくなります)
  4. 成功している事例(たとえば唐津市の「アザメの瀬」の例がでました)をみると、保全よりもまず「地域おこし」が優先されています。関係者全員が大事だと思う「求心力」が重要です。その地域の財産として自然が貴重であり、次世代以後のことも考える余力(後継ぎや若者がいる)があれば、おのずとその自然を持続的に利用しようということになるでしょう。個人の理念が先行すると、たいがいは成功していないようです。土曜にお話を伺った時はよく理解できませんでしたが、本当に農家が水田をたくさん作りたいなら(たぶんそこまでではないと想像しますが)、「全部」水田というのも、保全のためでなく、この地域の自然の活用形態として、あり得ると思います。
  5. 最後に、【】生物多様性よりも生態系サービスのほうが直接的な自然保護の根拠であると議論されていました。その価値観を共有しないことは理解しましたし、私も「生態系サービス」だけに固執する必要はないと思いますが、それを重視する観点は、自然保護の有力な根拠になると思います。目的を共有できる相手に対して、価値観が違いを強調することは、合意形成の場を損なうだけです。むしろ、価値観の多様性を認めたうえで、合意できる目標を定めることが大切です。【】「生態系サービス」というのは、明快な人間中心主義の表現であり、「共生」こそその自覚を捨てた表現とも言えるでしょう。ちなみに、生物多様性ならば、人間の都合でないとは言えません。それも、自覚の欠如に該当するでしょう。より根源的には、「種」概念そのものが人間による操作的な概念です。【】