水産資源学者は水産業界に貢献できるか?

Date: Thu, 22 Mar 2007 19:55:44 +0900

これから日本の水産業界に貢献するという視点からみて、研究者が果たす役割は大きいといえるのでしょうか。特に「水産業界における研究者の立場」という観点で

 それは研究者の振舞い次第です。
 あなたの希望は、水産業界を盛り立てたいという事だと思います。そのためにあなた自身が何をすべきかと言う質問と理解します(違ったらごめんなさい)。
 結論から言えば、以下のどの道を歩んでも、大きく貢献できる可能性は統計的には少ないでしょう。等身大の貢献という意味では、当然、業界そのものに進むのが確実です。しかし、一人でできることは限られます。大志を抱くならば、どの道でもさまざまな可能性があると思います。
 水産業界に勤めるといってもいろいろな道があるでしょう。たとえばMSC水産物認証制度】を成功させる、持続可能な漁業の技術革新を伴う起業を成功させるなど、大いに貢献できる道はあると思います。
 研究者になっても、業界に貢献したといえる人はわずかだと思います。邪魔をしている人もいるでしょう。私が何をしたかといえば、
1.海洋研と中央水研の共同研究で、マサバの資源回復確率と乱獲の関係を明らかにしたこと。この論文の後、水研の資源評価表で92,96年級群への多獲が資源回復を妨げたことが明記され、まき網業界もマサバの資源管理の必要性を認めるようになりました。
2.マグロの絶滅リスク評価によりレッドリストの問題点を明らかにしたこと。IUCNの評価は変わりませんでしたが、CITESへの掲載などはまだ提案されていません。
3.管理捕鯨の可能性を明言したこと。これでWWFジャパンもそれを認めるようになりました。
4.サンマ選別機への批判を2000年に気仙沼で講演し、選別機への見直しを促したこと。すぐには撤廃されなかったが、冷凍加工業界への期待にこたえ、最近、諸般の事情の変化により選別機が撤去されました。
5.知床世界遺産の科学委員として漁業者との合意形成に努め、遺産登録を実現したこと。
 これらのことは、科学者でなければできないことが多かったと思います。知床については若い○○君の貢献も大きいです。かりにあなたがにそれ以上の役割を水産業界で果たせるかといえば、それにはさまざまな才能が必要でしょう。
 公務員試験を受けて官僚になるという道もあります。ただし、この場合の個人の自由度は当分封印されます。あなたがほれ込むような官僚の指導者がいれば、その指導者に貢献するという道がありえますが、あなたでなければできない役割かといえば、当分はそうではないでしょう。
 政治家を使えという○○さんの意見は実感できません。科学者は、業界の針路を示すことだと私は思います。しかし、これは○○さんの世界を知らないからかもしれませんが。