日本の環境影響評価が「死んだ日」

Date: Tue, 13 Sep 2016 08:21:06 +0900
道北の風力発電7事業の環境影響評価(EIA)準備書に対する、北海道知事意見が出た。事業者にとって極めて厳しい意見がついている。しかし、以前、審議会の「品格」に苦言を呈したようなことはない。今回は「事業をやめさせるために無理難題を付ける」とあからさまに言うようなことはなく、EIA制度の趣旨を踏まえた意見だと思う(そのほうが、実は、事業者にとっては手厳しい)。やはり、公開の審議会の場での議論を踏まえれば、変えていただけるものだ。(引き続きのお願い、膨大な準備書を「宿題」で読み込む時間にも委員報酬を検討していただきたい。これは事業者が代わって支払うわけにはいかない)
 さて、環境大臣意見はどうだろうか。こちらは自治体意見と異なり、密室で、おそらく一握りの匿名の担当者が意見を決める。津軽十三湖のときのように「マガンが1000羽当たる」などと大臣に言わせても、だれも責任を取ることはないだろう。環境省自身が日本のEIA制度の趣旨を踏まえた発言ができるかが、今回の鍵である。
 環境省も多様である。野鳥を守れという自然環境局から、地球温暖化の1.5度目標を掲げる地球環境局まである。EIAは総合政策局が担当する。EIAは多様なStakeholderの合意形成を図る場である。それが密室の省内でできているのか、そもそも各担当者が自分の任務だけでなく、俯瞰的に環境政策を理解しているかが問われている。

Date: Tue, 27 Sep 2016 20:54:25 +0900
道北の風力発電7事業に対する環境大臣意見が出た。
 日本の環境影響評価とパリ協定が死んだ日となるかもしれません。少なくとも前者は確度が高い。

  • 道知事意見のほうがはるかにEIA制度の趣旨を理解している。読み比べてみるとよい。
  • せっかく事後に影響があったときに事業者が対処するよう道知事が求めていたのに、設置自身を阻むような環境省意見になってしまった。順応的管理のよき前例となる機会がつまれてしまった。
  • 回避、低減、代償措置を実行可能な範囲でとるという環境省告示を自ら否定してしまっている。
  • 道知事意見と異なり、公開の審議会のような場所で書かれた意見ではない。
  • マガンやハクチョウは世界的にもほとんど衝突事例がない。本当に危険があるとわかってから保全措置をとっても遅くはないはずだ。逆に、接近すれば止めると命じられたら、動かし続けても鳥のほうが回避するということは証明できないだろう。
  • オジロワシも移動経路の風車まで取りやめが指示されている。移動経路にある風車については回避することは環境省も認識していたはずである。

 環境省が問答無用で事業を止めることができるという前例を歓迎する人もいるかもしれない。【いずれにしても】、知事意見をどう出すかを苦労している自治体の審議会は、今までとやり方ががらりと変わることは確かだろう。