漁民の顔を見ずに計算するのが、「科学のみに根差す」資源管理ではない

Date: Thu, 5 Sep 2019 10:54:57 +0900
 【】水研の資源評価とABC新ルールに関しては、水産庁が研究機関(水研)の独立性を尊重する。各魚種のTAC化の是非や資源評価の施策展開については行政マターなので水研はかかわらない。逆に、資源評価については水研主導で進め、水産庁は関与しない。水研は水試や漁民とは調整しない。実際のTACや資源再建計画については(TAC魚種になれば)水産庁ステークホルダー会議を組織して、漁民の声を聞く。そういう方針に見えます。
 しかし、資源評価はデータを現場(水試)からもらって計算しても、現場感覚に合うこともあれば合わないこともある。そのすり合わせをしてこその資源評価だと思います。
 世界的にはどうなのだろうか。IWCでは、クジラなど見たこともなさそうな統計学者が資源評価で幅を利かせていた。似たようなもの(現場感覚がない資源評価が横行している)かもしれません。
 その意味では、日本でも、最近の資源評価にかかわる人材の過半数水産学部出身者ではない。魚類学者ですらない。
 私も水産学部出身ではない数理生物学者ですが、生身の生物と漁民に接する野外生態学者、魚類学者、水産学者をRespectしてきたつもりです。理論はSFの産物。現実に合うかどうかは常に現場の意見と付き合わせねばわかりません。まして、資源評価は自然死亡係数や生態系総合作用(の無視)など、未実証の仮定を用いた砂上の楼閣です。それでも役立つと私は思っていますが、現場の感触を常に気にしていなければ、危ういでしょう(哺乳類学者の見解を私のほうが修正させたのは、エゾシカの12万頭説でした。現場を見ても、絶対数はわからないのだと実感しました)。
 漁民の顔を見ずに計算するのが、「科学のみに根差す」資源管理と誤解しているようです。

追記(2019/9/7)

Date: Thu, 5 Sep 2019 13:16:59 +0900

昔の学者は、漁民の連れ合いに自分の連れ合いまでつるしあげられたがひるまず説得した、なんて「武勇伝」を言いまくる人もいました。
 もちろん、自主管理のみでうまくいくとは限りません。しかし、せっかく改正漁業法(持続可能性の説明責任が求められ、それがなければ漁業権は召し上げられる)という極めて強力なツールができたのですから、今こそ、漁業者の合意を図ることが重要です。
 ステークホルダー会議などを設ける点では、水産庁もそれを意識したと思います。環境NGOも入れるべきだという提案も受け入れられると理解しています。

Date: Thu, 5 Sep 2019 12:20:39 +0900

漁獲枠配分を決めないまま、ABCだけを減らし、来年からTACを導入すればその時初めてStakeholder会議で漁民の意見も聞く場ができるよう(その場では、科学的な議論はなく水研はいない)では、クロマグロの二の舞か。