生態系サービス劣化の非線形性

Date: Fri, 29 Jun 2007 10:39:03 +0900
ご意見感謝。

人が生態系サービスを求める順序は,第一に食糧や燃料などの供給サービス,以下,調整サービス,文化的サービスと続き,栄養塩類の循環や土壌形成などの基盤サービスはあまり意識されることはありません(Rodriguez et al. 2006, "Trade-offs across Space, Time and Ecosystem Services" Ecology and Society ).供給サービスを求めれば,生態系サービス間でトレードオフが起こり,例えば,全ての生態系サービスの基盤である「基盤サービス」の劣化が進みます.農地への施肥による栄養塩類の蓄積と流出は,時間的にゆっくりと,かつ,あまり気づかれること無く進みます.このようなゆっくりと変化する変数がある臨界点に到達すると,土壌生態系あるいは水域生態系に,不連続で急激な非線形的な変化が起こり,今まで受けていた生態系サービスを受けることができなくなることもMA【ミレニアム生態系評価】の中で指摘されています.

 これ、MAの何ページでしたっけ?一般論として正しいと思いますが、いつも非線形と言う抽象表現だけでなく、具体的な事例があると説得力が俄然増してきます。そういう例を普段から探しておくと良いでしょう。
Date: Fri, 29 Jun 2007 11:09:21 +0900

MAレポートの中では,「KEY QUESTIONS IN THE MILLENNIUM ECOSYSTEM ASSESSMENT」のP.89,右下に記載されています.(ここには水域の富栄養化について藻類の増殖と栄養塩の関係について記述があります.)オーム社の訳本では,p.152の中段です.尚,原著は,MAのシナリオ作成グループのレポート(S.13)「Lessons Learned for Scenario Analysis」を参照する必要がございます.

 MAのこの部分は、まぁ、話半分と言うか、話十分の一ですね。
環境問題では誇張される表現が多々見られます。上記がそうかどうかはわかりませんが、専門家としては、常に慎重な態度を示しつつ、大事な点で警告を発し続けると言う姿勢が評価されると思います。非線形性一般では、その迫力が足りないと思います。(どんな大きなものも考えられてしまいます)
 後は、技術を開発することでしょう。これがあれば、評論家ではなくなりますから。(私にはまねできない境地になります。期待しています)