質問2点:魚の内臓の放射線量、水産物のストロンチウム濃度

Date: Thu, 2 Jun 2011 09:32:39 +0900
 私の5/19時点での試算では、福島茨城産の野菜ばかりを毎日400g食べた場合の年間被曝量は基準値以上の食品が流通しない場合には0.95mSv、福島茨城千葉産の魚を毎日80g食べた場合の被曝量は0.03mSv程度です。あわせて1mSv前後であり、それによる発ガンリスクの増加は0.006%と推定されます(これなら1万分の1未満で、平常時でも平均値としては問題ありません)。基準値以上の食材も流通したとすれば、1.4mSv程度の被曝量になります。これは農水省が公表している「食品中の放射性物質の検査結果について(第57報)(平成23年5月5日)」の当該地域の全標本の濃度を単純平均したものを摂食しているという仮定から計算したものです。たとえばつくば市住民あるいはより遠方の人にとって、大気からの外部被曝よりも高い値になりますが、喫煙者と生涯同居した場合の間接喫煙による健康リスク(非ガンリスクも含む)の増加が2.5%と推定されるのに比べれば、ずっと低い値ですし、この地域の食材ばかり食べることはないとすれば、「食べて支援する」ことのリスクよりも、被災者を支援することのほうが重要と考える人も多いでしょう。
 この試算で分かるとおり、水産物からの被曝量は野菜よりもずっと低いものです。検出された最高濃度の食材を400g食べると、1回で0.4mSvの被曝になりますが、これを繰り返すことは考えにくいことです。また、ほとんどは事故直後の放射性物質放出による汚染が原因であり、ヨウ素を多く含む海藻を除き、現在の濃度は極めて低くなっています。今後、新たな放射性物質の大量放出がなければ、上記の値より被曝量はさらに少なくなるでしょう。
 これらの試算にもいくつか異論があります。
 まず、ICRPが出した被曝量と被曝リスクの計算が大幅に過小評価しているという批判があります。これはおもにチェルノブイリ事故による死亡者数を約4000人とするか数十万人とするかの違いによるものだそうです。後者には発ガンリスクだけでなく、移住などによるストレス増加、ストレスによる喫煙増加などによる死亡も含まれているらしい(どの程度かは要確認)。ガンよりストレスのほうがはるかにリスクが高いとすれば、これを根拠に低被爆者に避難を勧めたり不安を煽るのは本末転倒といえるでしょう。
 また、上記試算は野菜を流水30秒で除染し、魚は頭部、内臓、皮を食べないという前提で計っているとして、消費者団体から異議が出ています。しかし、これらを考慮しても、大幅にリスクが高くなることはないでしょう(どなたか、*ヨウ素セシウムストロンチウムについて、内臓や皮を食べた場合にどの程度被曝量が増えるか、およその答えをご存じないでしょうか?10倍以下とか具体的な見積もりがあると、説得力が増します)
 最後の難問は、ストロンチウムトリチウムプルトニウムの濃度がほとんど測定されていないことです。今後の放射性物質の再放出が心配されますが、現時点では半減期の短いヨウ素の濃度は順調に検出限界以下になりつつあります。【】ストロンチウム90は半減期が長く、かつ生物に蓄積するので、移行係数はCsより約2桁高いものです。これに生物濃縮が加わると、Cs137やヨウ素131よりも大きな影響になると懸念されます。(*どなたか、海水中のSr濃度が【たとえば】Csの100分の1のときに、どんな魚に【Csに比べて何倍】程度Srがでるか、【過去の核実験時代などの知見から】およその情報を持っていないでしょうか?)しかし、もともとの被曝量が上記試算ではかなり低いので、これも、それほど大きな問題ではないと期待します。
 いずれにしても、最大値の食材ばかり食べても発癌率は1万分の1以下に抑えたいものですから、平常時には、基準値を超える食材は許容されません。大事故が起きてしまったことで、平常時の基準は守れない状態になりました。そのリスクは無視できませんが、どの程度のリスクかを冷静に考えるための試算です。私は、十分低いと思います。それよりも、被災者の境遇のほうがはるかに深刻です。